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建の耳元で誰かの声が聞こえた。が勿論建の真横二誰かがいるわけでは無い。
「雨音か?そんなはずはない、今ハッキリ聞こえた」
建は周りを見回してみた。
小雨の公園に人が居るわけもないのだが、何度目か見渡した時、西側の雑木林に黒っぽい着物の男がこちらを見詰めている。
建から着物の男まで五十メートル以上はあろうか、だが、男の異様な風体は理解できる。
「怨みの匂いってヤツか・・・ケケケ」
着物の男が霧雨を割るように建の方へ歩み寄って来た。
伊助である。
伊助は、口角だけ笑みを浮かべ、建に表情が見えるまで距離を詰めると、首を傾け建を呼び寄せるような仕草をすると、笑い声のような、咳払いのような声をあげ、向き直って元いた方向へ歩き始めた。
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