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長津田の講義が興に入ってくると、何故か村上はそれを楽しむかのように、不適に笑うような表情を見せ、教授を見上げた。
「二つめ、仮に、仮にだが!刀鍛冶天国がそのような刀を作れたとしよう!その八咫烏を封印した小烏丸は何故幕末まで数百年もジッと隠れていたのだ?しかも150年近く経ったこの東京で何故都知事と織田大臣を襲わなければならないのだ?」
村上はおもむろに立ち上がり、長津田を見詰めると、胸ポケットから一枚の写真を取りだした。
「先生、この写真の少年をご存じですか?」
村上は、加茂建少年の写真を長津田の視界に入れるようにすると、短い溜息を吐いて言葉を続けた。
「この少年は、元和歌山県議会議員の加茂健一郎氏のご子息です」
長津田は、加茂健一郎の名を聞くと一瞬眉間に皺を寄せ、息を呑んだ。
「その・・・加茂議員の息子さんが、君の推理と何の関係があるんだ?」
「あの小烏丸に封じ込められた一人が、建君なのです、そして建君の怨みが宿り、刀は織田大臣を貫いたのです、そして、建少年の次のターゲットは、長津田先生、アナタなのですよ・・・」
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