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翌日。
明治神宮ミュージアム、特別展示室近くに村上と岩田が待機している。
「村上よぉ、長津田の警備を他のモンに任せていいのかぁ」
「ヤツの狙いは長津田じゃない、きっとこっちに来ますよ」
村上と岩田のインカムに、会議室に設えられた講義会場からの無線が入る。
「こちら講義会場廊下、写真の少年らしき者を確認」
岩田は村上を見る。
「お前の感もハズレる時があるんだな」
村上はその言葉に軽く舌打ちをするが、すぐにそこを動こうとはしなかった。
一階の二十人入ればやっとの講義会場には、十数人の観客しか入っていないが、長津田は淡々と古代から平安にかけての歴史の講義を行っている。
そこへ突然、後ろ側の扉が勢いよく開き、一人の少年が入ってくる。その少年は青白い顔にただ薄紫色に輝いた瞳で長津田をぼんやり睨んでいる。
長津田はその少年の顔を見た途端、恐怖に引きつり「ヒッ」と怯えたように叫んだ、少年の青白い風貌に恐れたのもあるが、その少年の顔が昨日村上に見せられた写真の少年であった事の方が驚きであったようだった。
硬直した長津田を、少年は冷たく睨み付け、長津田の脳内にだけ届く言葉を発した。
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