空白の彼女

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「さてと、どこから話せばいいのやら…」 先ほどとは違って緩やかな時間の流れるこの場所でマスターの入れてくれたコーヒーはとても特別なものに思えた。 「あの2人はどうやって出会ったんだ?」 10年という歳月は長いようで短い。 どこから話したらいいのか決めあぐねている高端に俺は一番気になっていた2人の出会いを尋ねた。 芸能人と一般人 全く接点がないわけではないけれど都会に住んでいたとしてもそうそう運良く会えるものでもない。ましてや仲良くなるなんて事はもっとありえない。 「奏と静香の出会い…ね。言っておくけど漫画や小説なんかでありそうなありきたりなものよ。 それが運がいいのか悪いのか、あの2人に起きただけで…」 高端はそこまで話すと急に言葉を止めた。不思議に思い声をかけようとするとなぜか高端はジェスチャーで声を出すなと言ってきた。 大人しく声を出さずにいると個室の扉の向こうから男性の話し声が聞こえてくる。マスターと話しているらしい男性の声は個室のすぐ外まで近づいてきてピタリと止まった。ここまで近づかれると流石に話している内容がしっかりと聞こえる。 「マスターがそこまでおっしゃるのであれば今日はここまでにしておきます。けれどもし、静香か絵梨のどちらかが竹松という男性を連れてこの店を訪れたらすぐ俺に連絡をください。」 声の主は奏だった。特徴的なその声は最近のドラマや流行を知らない俺でもすぐに誰なのかすぐにわかる。 扉から離れた奏はその後、マスターと二言、三言話してから帰った様子だった。 「危なかったわね。このお店は静香も連れてきたことがあるのよ。だからきっと奏くんも知っていたんでしょうね。まさかマスターとあそこまで仲がいいとは私も思わなかったけれど。」 一難去って高端は小さなため息をついた。その表情は全くホッとしているような感じは受け取れないが俺と奏を鉢合わせさせるような事になればめんどくさいのは分かっているのだろう。 俺自身一方的に突っかかられたりするのはごめんだったので今回ばかりはうまく話を合わせてくれたマスターに感謝しかない。 「当たり前のことだけど奏にめちゃくちゃ警戒されてんのな。俺って…」
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