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side girls
「静香?」
名前を呼ばれて自分がぼーっとしていたことに気づいた。顔を上げれば書斎で仕事をしていたはずの奏が目の前にいて不思議そうに私を見ていた。
「あれ…奏、書斎にいたんじゃなかったの?」
「一区切りついたから少し休憩しようと思ってさ。一緒に紅茶でも飲もうとしたのに静香ってばいくら呼んでも返事しないからびっくりした。」
「そうだったの?ごめんね。」
私が謝ると奏は隣に座って急に抱きしめてくる。
「・・・奏?」
彼が何も言わずに私に触れてくるのは珍しい。先ほどの奏同様名前を呼ぶと彼は肩口に顔を埋めてなぜか笑っている。
「ははっ!ごめっ…急に……。なんかこう、ね?」
「なにそれ、それじゃあ全然わかんないよ」
不思議な態度に笑いながら抗議しても奏は明確な答えは教えてくれなくて、結局気がすむまで好きにさせておいた。
体に回された腕はそのまま、新しいいまさら解くのもアレなので放置して読んでいた本に意識を戻そうとすると今度は本を取り上げられた。
「なっ!…」
何すんの!と言いかけた言葉は声にならずにキスで消える。今日の奏は本当に様子がおかしい。何かがいつもと違う気がする。
「…んっ……」
舌を絡める大人のキスは微かな水音を部屋に響かせて嫌でも頭の中が痺れるような感覚になる。呆れるくらい長い口づけは静香の唇の端から吐息が零れた事でようやく唇が離れた。ようやく酸素を吸い込める事にホッと一息つくと奏はそのまま首筋から鎖骨に舌を滑らせてニットの下に手を入れて来ようとするもんだから慌てて止める。
「ち、ちょっ、今からするの!?」
奏の両手を掴んで問いかけるとなぜかまた不思議そうな顔をされる。
「この空気で何もしない方がおかしくない?無理矢理こういう雰囲気にしたのは俺だけど静香だって気持ちよさそうにキスされててくれたからてっきり了承してくれたのかと。」
「それは奏が……っ!」
反論しようと開いた口もすぐに塞がれ、ブラジャー越しに胸の先端を擦られる。私の弱い部分を全て知っている奏は止める気なんてさらさらないようでそのまま右手も下着の中へと伸びていきすぐにぐずぐずにされてしまう。
「か、……っう、」
「もう黙って、俺のことだけ見ててよ。」
出会った頃から付き合い始めてもずっと奏は彼が再び私の心を全て支配してしまうことを恐れていた。だからいつも抱かれるたびに自分のことだけを見ていてほしいと口にする。
もうずっと奏しか見えていないのに。いつも。
「奏のことしか見てないよ」
「うん。だから、絶対に離さないで。 何があっても。」
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