side girls

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「ありがとうございます…。あの、それで私はどうしてこの部屋で寝てい…た………はっ!!」 お茶のお礼を言ったところで思い出した。あたしそういえば仕事中に倒れてそこからの記憶がない!! しかも誰かにぶつかって… どどどどどどうしよう!?もしもぶつかった人が実はお客さんに混じって来ていた有名人とかテレビ局のお偉いさんだったら何怪我させてんだって派遣会社の方からしこたま怒られて治療費払え!!なんて言われてお給料が貰えなくなったりするんじゃ… 「あの~、えっとぉ…お嬢さん?」 急にパニックになった静香に今度は眼鏡の優しい人が首を傾げているとまた楽屋の扉が開いた。 「おつかれ~って、ヤマさんどうしたの?」 「あ、奏さん。お仕事お疲れ様でした!今日もいい笑顔でしたよ〜って、そうじゃなくてっ。この子が目が覚めたと思ったらなぜか急にパニックになりまして。」 ヤマさんと呼ばれた人以外にもう1人の声が聞こえて入って来た人に視線を向けた。そこにいた人はアーティストではないけれど今日の生放送にもいた今一番旬な人の、 「 なっ、えっ、奏っ!?」 「なんだよヤマさん、この子普通じゃんか。」 ヘラっと笑った彼はヤマさんと呼んだ眼鏡の彼を小突いている。最初にこの楽屋へ挨拶もなく出入りできていたことから奏のマネージャーさんということだろうか?2人のやりとりを見ていたら奏と目があう。 「初めまして。スタジオでオレにぶつかってそのまま気ぃ失ったんだけど覚えてる? あん時ちょうど客の出入りしてたし医務室まで運ぶ人手も無かったからひとまずオレの楽屋に運んだんだけど、具合どう?」 さすが今一番テレビに出ていると言っても過言じゃない人物だ。外国の血が少し入っているらしい彼は目鼻立ちのくっきりした顔立ちをしていて誰が見ても顔が整っているのが分かる。 「ん?オレの顔に何かついてた?」 「いえ!全然!!ぶつかってしまってすみませんでしたっ!!」 私はサッと立ち上がり腰を90度に曲げて深く謝罪をするとそのまま置いてあったカバンを掴んで楽屋を飛び出した。たかだか一介のバイト風情が関わっていい人種では無いしこんな薄汚い人間と少しでも関わっていたなんて世間にバレたら彼に迷惑がかかることも間違いない。 職場にどうやって謝罪すればいいのか… そんなことを考えながらスタジオの廊下を走り長い廊下を曲がったところで歩きに変えた。向かいからまだ仕事中のスタッフが見えてきて「お疲れ様です。」とお辞儀をしながら出口までの道を歩く。 クビになったらまた新しい仕事を探さなくちゃ。派遣のこの仕事は特殊だ。だけど、業界の人に迷惑をかけるなんて大失敗をしたのは初めてだった。
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