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あの後、ちゃっかりした奏に強引に連絡先を交換させられてから何かと適当な理由をつけてご飯やら映画やらに付き合わされていた。
最初こそ相手は芸能人なので迂闊な付き合いは向こうにも迷惑がかかるし一般人の自分が奏に関わって(ありえない可能性の方が圧倒的に高いが)マスコミにとやかく言われたり追いかけられたりするのは御免なので無視していた。
だが向こうが退いてくれる気配は全く無く、とうとう奏はコネを使って静香が登録している派遣会社に連絡までして来て…
最終的に自宅へ押しかけて来てしまったので彼との関わりを持たざるを得なかった。断じて自分から望んで彼のそばに寄っていったわけではないと声を大にして言いたい。
「はぁぁぁぁ…。」
「久しぶりに会えたと思ったらこれまた盛大なため息ついちゃってるね。どしたん?」
地元を離れてからというもの今まで仲がよかった友人とは極力連絡を取らないようにしていた。稀に届く連絡には相手に少しだけ申し訳ないと思いつつも仕事が忙しく今後会えるかどうか分からないと伝えた。
ただ幼馴染の絵梨とこの子だけは、三葉(みつは)だけは地元を離れる数日前に助けてもらった恩もあり理由を全て話していた。両親との仲がよくない点では三葉も同じこともあり私の全てを知った上でそばにいてくれる大切な友人。
彼氏に付き添って都内へ遊びに来ていた彼女から連絡をもらって今日は人気のキャラクターとのコラボカフェへ2人で遊びに来ていた。そこで席に着くなり大きなため息をついてしまい今に至る。
「離すといろいろ長くなるんだけど…」
「え、めんどくさいからギュッと纏めて。」
「やべぇ奴(客観的から見ればイケメン)から付きまとわれてる。」
「詳しく話を聞こうではないか。」
***
隣で寝息を立てている奏を起こさないようにそっとベットから体を起こして寝室を後にした。身体は何も纏っていないせいか右手の薬指に光る宝石のついた指輪が目立つ。付き合い始めてから奏は何度も私に似合いそうだからとアクセサリーをプレゼントしてくれようとしたことが何度もあった。けれど全て断っていたから奏から貰うアクセサリーのプレゼントは婚約指輪が初めてになる。
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