side girls

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いつか奏が他の女の子を好きになって私は捨てられる日が来ると思って疑わなかったから未練も何も残らないようにプレゼントの類を受け取らないでいたのに、結局受け取ることになってしまった。 奏は指輪をつけた私の手を見てとても嬉しそうに笑っていた。 あれだけ避けていたのにどうして許してしまったんだろうか… カーテンをそっと開けると空がムラサキに染まっていた。青空と夕陽が混じり合う不思議な景色を瞳に移してもう一度カーテンを閉めた。 時計を確認すればそろそろ夕食を用意しなければならない時間だ。そうはまだ眠っているけど仕事のペースを考えれば起こしてあげなければならない… 「まぁ、たまにはもっとゆっくり休ませた方がいいか。」 ふふっと小さな笑みをこぼしてから寝室を後にして夕食の準備に取り掛かった。 * 奏の好きなクリームソースで味付けをしたロールキャベツのいい匂いがキッチンを満たし始めた頃、子供のように寝ぼけ眼を擦りながら奏が寝室から出てきた。陽はすっかりと落ちて空には星が輝き始めている。4時間の昼寝は疲れを飛ばすどころか眠気を増してしまったみたいだ。 「おそようさま。ご飯もうすぐで出来上がるから顔洗っておいで。寝起きでシーツの跡が顔についてるよ。」 「ん~………」 返事なのかなんなのかよくわからない言葉を残して洗面台に向かっていった奏を見送ってからお皿に出来上がった料理をよそう。うん、今日も美味しく出来た。 「あ、俺の好きなのだ。」 テーブルにお皿を並べているところで腰に手を回され耳元で奏の声が聞こえた。顔を洗って少しさっぱりしたのか話し方も先ほどとは打って変わってハキハキとしている。 「家事こなしてるときにくっつくのはやめてっていっつも言ってるじゃん。はっきり言って邪魔です」 腰に回された腕をさっと解いてキッチンへ向かう。 「相変わらず手厳しいねぇー。ま、そんなところも好きなんだけどさ。」 好きという言葉をさらりと口にする奏に慣れたのは最近になってからだ。自分が置かれている環境に疲れて、もともと自分を否定する癖が強くあった私は奏と付き合う前も付き合ってからも「好き」と簡単に伝えられる奏の思考がわからなかった。
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