side girls

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それから何かと理由をつけて奏は私を自宅に招いた。最初は仕事もあるし奏とは違った意味で忙しいので断っていたのだけど断っているにもかかわらず強引に連れて行かれることも多々あったので私が折れるしかなかった。 「なんか囲われてる気がしなくもない…」 「ははっ、私もこんな立場じゃなければ全然構わないんですけどね。奏さんの考えることは普通の人には分かりかねますよ。」 今日も今日とて奏の家に向かっている(向かわされていると言ったほうがいいのか?) 顔なじみになったマネージャーの山谷さんともなんだかんだで仲良くなり奏が自宅で執筆仕事にも関わらず私を呼んだ時にはこうして送り迎えをしてくれている。 「奏は、、、」 そう口にして止めた。山谷さんが気になったのかルームミラー越しに私の顔を見ている。 「奏は山谷さんが見張ってなくてもちゃんと仕事していますかね。」 「それに関してはノーコメントです。」 自分が好きで始めた俳優と作家という仕事のはずなのに奏は作家の仕事に限りよくサボる。長時間光り続ける画面に向かって黙々とタイピングするのは嫌いらしい。 「それならどうして作家になんてなったのさ」としか言いようがないけれど物語を創造するのも好きらしいのでこれ以上深く突っ込むのはやめた。 「さて、もうすぐで奏さんのマンションにつきますよ。私はこのまま別件の仕事がありますのでそこに置いてる荷物を奏さんの部屋に持って行ってもらえますか?」 「わかりました。仕事も早めに終わらせるように言っておきます。」 「流石、頼りになりますね。」 送ってくれた山谷さんにお礼を言って借りている合鍵でマンションにはいる。何度か来ているけど相変わらずこの豪華な設備には慣れない。 エレベーターで最上階まで上がって来ることは知っていると思うが念のためにインターフォンを鳴らして奏が出てくるのを待つ。 だけど、待てども待てども奏が応答してくれる気配がない。 「奏ー?勝手にお邪魔しますよー…」 仕方がないので合鍵で開けて部屋に入るがそれでも返答は返ってこない。山谷さんから渡された荷物をリビングに置いて仕事部屋を除くと奏は真剣な表情でパソコンとにらめっこの真っ最中だった。
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