side girls

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そしてそのまま、 「・・・・・っ!」 今、私が出せる渾身の力で奏の顔を殴っていた。真顔で。・・・真顔で。 大事なことだから二回言った。 奏は一瞬、してやったりみたいな顔を浮かべていたが殴られてすぐ声も出ない痛みなのかその場で蹲っている。なぜ私はその場から逃げないかと言うと逃げられないからだ。片手を奏に掴まれているから。 「~~~~~っ!!痛っっった!!何その力、めっちゃ痛いんだけど!?」 「は?何言ってんのお前。」 反論に対して自分で思ったより冷たい声が出てびっくりする。でもそれぐらい腹が立った。 「顔が整ってて、芸能人で、周りからも信頼されてて、仕事も順調だからっていい気になってんじゃないわよ!ふざけてこんなことするなんて最低! 二度とあたしの前にそのツラ見せんじゃねぇ!帰る!!」 怒りに身を任せて怒鳴りつけてその場から立ち去ろうとしたのに奏に掴まれた左手によって阻まれる。 何なんだマジでこいつ。 「帰るって言ってんのが聞こえなかったの?離せバカ!」 「・・・・・」 もう一度怒鳴るように口にして睨みつけたのに奏は俯いてた顔を上げてじっとこちらを見ているだけで何も言わない。イライラする。 しばらくそのまま睨み合い?を続けてようやく奏が口を開いた。 「怒れるじゃん。ちゃんと感情を口に出して話せるじゃん。何いつもそんなに無理してんのか知らないけどもっと肩の力抜きなよ。」 よくある恋愛小説とか漫画で見かけるこの言葉はこうゆう時のために存在するのかとのちに理解した。 頭が体の全てが機能することを放棄して真っ白になる。 「過去に何があったのか詳しくは分からないけど両親にも身内にも一切頼らずにたった1人で上京してきて体売ってまで仕事して自分を傷つけて何でそんなに無理してるの。頼ってくれるように側においたのにどうしてそんなに自分を安く売るの。もっと自分で自分を大切にしてあげなよ。」 奏は殴られて真っ赤になった頬から手を離してゆっくりとその手を伸ばしてきた。指先が触れるか触れないかの距離に近づいてきた時、 「・・・いやっ!!」 この先に起こる事が分かってしまい無意識に体がそれを全力で拒否する。一歩、また一歩と近づいてくる奏に比例して少しずつ後ずさるけどここはキッチン。逃げられないと分かっててもこの手には捕まりたくなかった。
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