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「この場所が…」
見上げたのは大きなビル。エントランスには美人系、可愛い系、2人の受付嬢が来客に笑みを浮かべて対応していた。
EPpプロモーション株式会社と書かれた名刺を持って先に来ていた来客が立ち去るのを待って受付嬢に声をかける。
「あの_______」
******
「あれ、もしかして戸松…?」
慣れない名前呼びをされて振り返る。そこにはどこか見覚えのあるような男の人が立っている。
「えっと…」
「久しぶりじゃん!同窓会来てたっけ?俺だよオレ!五十嵐だよ、五十嵐 伊緒!」
「・・・・あぁ!!」
同窓会で司会をやってたような気がしたけどあの日は酔ってたし気に留めてなかったから忘れてた。
「おいおい昔の同級生の顔忘れんなよなー。男連中なんて化粧で化ける女よりそんなに変わんないだろ。」
一緒に歩いていた連れの人と一言二言話すとこちらにやってきた伊緒は学生時代よりも随分と身長が伸びていて男らしくなっていた。
「一緒にいた人いいの?」
「あーあいつ?いーのいーの、会社の後輩なんだけどせっかく東京出張の合間を縫っての観光なのに連れが毎日顔合わせてる野郎の顔なんてつまんねぇじゃん?だから適当に言って蹴散らして来た。」
「蹴散らしてきたって…相変わらずだね。」
学生時代もクラスの男の子とはしゃいで何度か先生と怒られていたのを見たことがある。
せっかくなので少しお茶をしようということになって近くのカフェに入った。優しい人柄の奥さんが注文を取り終わったったところで伊緒がニヤッと笑ってこちらを見てくる。
「それで?ずっと気になってたんだけどその薬指につけてる指輪。位置からしても婚約指輪か結婚指輪だよね?あ、もしかしてもう戸松じゃないとか?」
触ってもいい?と一言置いてから左手をとって指輪に触れてくる。どうやら私の知らない数年で女性の扱いも手馴れたものらしい。
「結婚はまだしてないけど婚約はしました…。あははっ、なんか改めて言うとなんか照れるね。」
「ふーん、なんか知らない間に綺麗になったかと思ったらちゃっかり幸せ掴み取っちゃったってわけね。嬉しそうにしやがってこのこの~!」
視線を右往左往に彷徨わせつつ言うと伊緒は笑った。
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