10years ago

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同窓会もそろそろ終わりに近づいて来たころ、参加者が全員揃ってからは締め切られていた扉の外側少し騒がしくなった。 その声につられて将也を含めた何人かが外の様子を見に行ったが一向に戻って来る気配がない。 「なんだか騒がしいな。」 「なにかあったのかな?」 酔いつぶれている司と大輝を任せて俺も扉の外の様子を伺いに行く。廊下に出る前に広間を見回したけど彼女の姿も見えなかった。 「てめーはなに様なんだよぅ!!洒落たサングラスとマスクを外して素顔を見せろってんだろ!」 そこにいたのは学生時代からやんちゃばかりで喧嘩っ早かった東雲が言葉通りサングラスとマスクに帽子を被った明らかに俺たちの同窓会の参加者ではない人に酔っ払って絡んでいた。 でも、俺はそんなそんなやりとりをしているよりマスク男の側で高端にもたれかかり今にも倒れてしまいそうな富松に視線がいく。酔いつぶれてはいないようだがお酒を飲んで気分悪くなったらしい。 ってことはマスク男は富松の知り合いか? もやもやといろんな考え事をしていると完全に見ていなかったマスク男の方から悲鳴が聞こえて振り返る。東雲に胸倉を掴まれてかけていたサングラスが外れマスクも取れかかっている。 「ねぇ!あれって俳優の奏(そう)じゃない!?」 「うそ…なんでこんなところにいるの!!」 野次馬が一斉にざわつき始めせっかく変装していたのにバレてしまいマスク男が小さく溜息を吐いた。 そこでようやく駆けつけたホテルの従業員と警備の人が2人を仲裁して野次馬達もこれ以上は関わるなと言わんばかりに散らされる。 「・・・っと。」 人の波に少しだけのまれて会場の中に戻されそうになるが無意識に先ほどの光景を思い出して彼女を探してしまう。 ようやく見つけ、介抱するなら手伝おうかと思い声をかけようと近寄ろうとした彼女の側には高端となにか話をしながら富松を抱いているマスク男がいた。富松も完全に身を預けていて それだけで2人が親密そうな仲であることを伺わせている。 ジッと見ていたのに気づいたのかマスク男と目が合う。何も反応しないのはまずいと思い軽く会釈をすればマスク男も申し訳なさそうに返してくれて富松を抱いたまま高端と一緒にロビーへ向かって行った。
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