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夢で逢いましょう
また、静香と連絡が取れなくなった。
自ら強制的に差し込んだ腕枕をしていた右手を引き抜いて静香の携帯から連絡先を手に入れた。もちろん自分の連絡先もしっかり入れてからベッドサイドにあるテーブルに置いた。
「・・う、・・・・・ん?・・・」
甘さを含んだ声が聞こえて隣に視線を移したけど静香はまだ眠ったままで起きそうな気配はない。まぁもともと抱き潰す気でヤることヤってたからちょっとやそっとのことで目覚めたらそれはそれでびっくりするんだけど…。
もう一度眠る静香のぴったり隣に体を滑り込ませて柔らかなその体を腕の中に閉じ込めた。 すぐに触れられる距離にいるのに絶対に手に入らない。
「絶対に話離してやらない。」
眠る静香の顔を持ち上げて触れるだけのキスをする。もう一度今一緒にいることを確かめるように抱きしめ直せば人の温もりが近くにある安心感で眠気が降りてくる。本能に抗うことなく瞳を閉じればすぐに夢の世界に旅立っていった。
重なり合う寝息が止まってパチリと瞳を開ける。身体に回された腕はちょっとやそっとのことでは外れそうになくて思わず小さく息を吐いた。
奏の事はもちろん好きだ。ずっと過去のしがらみに囚われて前に進めずにいた私に手を差し伸べてくれて奏を信じられないとしても信じられるようになるまで側にいると正面から伝えてくれた。
少しずつ2人で距離を縮めていってこれからの未来を一緒に過ごして行きたいと思えるまでに成長した。
それなのに最悪なタイミングで秀哉と再会して心が揺らいでしまった。あの時同窓会に行かなければよかったと思わずにはいられなくて、けど秀哉に想いを告げられてまだ未練を断ち切れていない自分に心底苛立って、自分で自分の感情がコントロールできない。
もしかしたらまだ秀哉を好きかもしれない
だけど、今さら奏を裏切ることもできない。
私はいつからこんなにも決断できなくなってしまったんだろう…
眠って腕の力が抜けた秀哉の拘束を解いてベットから起き上がる。寝室の扉に手をかけたとき寝返りを打つ物音が聞こえて反射的に振り向いた。秀哉はまだ目を覚ますことなく1人ベットで眠ったままだ。
「良い夢を、秀哉…。」
久しぶりに口にした彼の名を呼ぶ声に伝えられない本音を乗せて部屋の扉を優しく閉めた。
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