夢で逢いましょう

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何度も何度も匂わせ、伝えられる言葉ははっきり言ってあの頃の自分にとっては迷惑でしか無かった。一般的な男の子より整った顔、親の影響で始めたサッカーで程よく焼けた肌に頭も良い… 学生時代それなりにモテるに決まってる。 付き合った女は数知れず 告白されたらそのまま付き合い相手からフラれるを繰り返す。 どうやら自分は人を好きになる感情が少しだけ欠けていた(らしい)し女運が壊滅的に無かった。 だから、静香に好かれた時も心底めんどくさいものでしか無かった。 女という生き物を心の奥底では嫌っていた。 そんな勘違いは20歳を越えるまで続いていた。 * 「あれ、秀哉じゃね?」 会社の飲み会を終えてタクシーで帰ろうと駅へ向かっていたところ、ふと声をかけられて視線をあげた。 「えっと、隼人と…司、だよな?」 目の前にいたのは割と最近会った友人達。1人は見知った人物だしそれが隼人だってことは分かりきってるんだけど、 「なぁ隼人さんや、俺達にこんな知り合いいたっけ?」 「奇遇だな、俺もそう思う。」 「なんだよ2人してー!!そんなにダサい服装じゃないだろー!」 司(と思われる)人物はここが東京の駅前で人通りも多い交差点であるにも関わらず大きな声で騒いだ。 「悪りぃ悪りぃ、冗談だって。てかなんでお前らこっちにいるん?職場、地元じゃ無かったっけ?」 隼人より頭一つ身長の低い司の頭を撫でてる、と見せかけて押し付けながら尋ねる。同窓会で会った時はたしか司は親戚の会社のサポートを、隼人は地元の有名企業の営業に就職していたはずだ。司は親の仕事を継ぐ将也た就職時の境遇が似ているためか酒が回ってから2人でめちゃくちゃ仕事や上に立つものとしての何たるかを話し込んでいたのを覚えている。 「そうなんだけどさ、たまには遊びたいじゃん?だから溜まってた有給を無理やり消化して司誘って遊びにきた。」 「なる。」 何はともあれ同窓会ぶりの旧友との再会だ。先ほどまでは会社の飲み会帰りで家が恋しくて仕方がなかったけれど2人は別物なので近くにあった居酒屋に足を向けた。
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