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対処に困った里子は、とりあえず顔から珍獣をベリッと剥がし自分の膝に乗せた。
「これからどうする? 何か当てでもあるの?」
その問いに珍獣が「うむ」と頷くと、里子を見上げた。
「さっき、魔力が使えないと言ったが、正しくは魔力を何かに奪われておるじゃ。吸い取られてるとも言えるかのう。なんとなくじゃが……その方向が分かる。だからそれを辿って行こうと思うのじゃ」
「ほう」
里子は頭の中で電卓を叩く。
(なるほど……まったく当てがない訳でもないのか。じゃあ、魔力が戻って本当にこの珍獣がドラゴンだったら、今回の迷惑料として病気をちょちょいと治して貰ってから家に帰ろう! それまで家族には申し訳ないないけど……せっかくの異世界、楽しんじゃうぞ!)
里子は我ながらいいことを思いついたと、溢れんばかりの笑顔を珍獣に向けた。
「これから一緒に頑張ろうね! よろしく! ドラゴンさん!」
珍獣は目を見開く。
そして、モジモジしながら「ドラゴンさんはやめてくれ!」と目を逸らした。
里子の計算も知らずに照れているらしい。
「じゃあ、なんて呼べばいいの?」
「なんとでも呼ぶがよい」
「えー? うーん。あっ、ケツァル! ケツァルコアトルのケツァル。どう?」
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