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プロローグ
「みぃーつけた」
少女が口角を上げただけの笑みを浮かべ、少年にゆっくりと近づいて来る。
少年は顔の色を失い、少女を見つめたまま立ち竦む。
「どうして逃げるの? いつもみたいに一緒に遊びましょう?」
少女が首を傾げながら、その白く細い指を伸ばした。
少年はその指から逃れるように、身を捩り声を絞り出す。
「なっ……なんで……この場所が分かったの?」
「はぁ? なんでぇ? ふふっ。面白い質問ねぇ……アンタの考えそうなことくらい手に取るように分かるからよ」
少女が相好を崩し、サラサラとした長い髪を弄びながら続ける。
「ふふっ。まぁ、そんなことどうでもいいわ……早くワタシを楽しませてよ!」
少年は恐怖に全身を小刻みに震わせ、必死に頭を左右に振り叫んだ。
「嫌だ! ……もう、絶対嫌だ!」
少年は自らを奮い立たせ、少女を力一杯突き飛ばし走り出す。
少年の必死の抵抗に、少女が溜息を吐いて肩を竦めた。だがすぐにベロリと自らの唇を舐め、その瞳に異様な輝きを灯す。
「なぁに、また鬼ごっこ? ……ふふっ。いいわよ、すぐ捕まえてあげる」
少女の顔が悪戯っぽく歪み、嬉々として少年を追いかけ始めた。
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