等しく浴びて等しく生きる

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空を見上げると晴れている。 けど、視線を前に戻すと帰るべき家のある場所は灰色の雨のカーテンで覆われている。 この場所も間もなく雨に包まれるだろう。 『いい匂い』 幼少から、物心ついたときから覚えているこの匂いは昔の思い出を連れてきてくれる、雨の日限定の想いを乗せてくれる機関車だ。  機関車は進む。  日本を飛び出して、  今雨を降らせている雲を抜けて、  地球に住む人々の雨の日の想いを乗せてきた。  ある人は笑っていた  ある人は泣いていた  ある人は怒っていた    でも、みんな生きている―何かの想いを雨から受け取って 色々な想いを私も抱いた、この雨に。そしてそれを乗せて機関車は出発した。雨を浴びてなにもかもびしょ濡れになってしまったけど間もなく来る晴れに急かされて去ってしまう雨脚に向かって私はとびっきりのお礼をしよう。 『雨のおかげで生きている、ありがとう』 私はいつの間にか通り過ぎた雨を後ろに再び家路についた。
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