第二話【とっとこワンちゃんの家出】

1/89
前へ
/89ページ
次へ

第二話【とっとこワンちゃんの家出】

 期末テストを来週に控えた放課後のことだった。 「おい、雛太。どうせ暇してるんだろ。手伝いに来い」  学校の自習室に残って勉強していた雛太は、瞳瑠先輩から電話を受けた。  いわく瞳瑠先輩は今日、西荻窪の中町児童館で『おもちゃドクター』として玩具や、ぬいぐるみ等の修理ボランティアに従事しているらしい。 「あの、僕、いま大事な試験勉強を」 「お前個人の試験勉強と地域の子供たちの為のボランティア活動と、どっちが世の中の役に立つと思っているんだ?」 「でも、どうせ僕が行っても、先輩の小間使いにされるだけでしょ?」 「もし俺が、ガンジーに手助けを頼まれたら、何をさしおいてでも駆けつける」  いやいや、あなたはガンジーじゃないですやん。  そうは思ったが、試験勉強にもちょうど身が入らなくなっていたところだ。  けっきょく中町児童館へと向かうことにしたのだが。
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加