第二話【とっとこワンちゃんの家出】

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 炎天下の住宅街で、目的地を探す羽目に陥ると安請け合いを心底悔いた。  はあ、面倒くさいことになっちゃったな……ほんと僕ってノーと言えない日本人……。  善意などというもので引き受けたわけではない。  相手が困っていると思うと、ついつい断るのが悪い気がして合わせてしまうのだ。  そんな性格のせいで、これまで随分と損をしてきた。  大体、人というのはこちらがお人好しだとみれば、図に乗ったり、つけこんでくることも少なくない。  でも人に利用されるばっかりの人生なんて、もう懲り懲りだ。  絶対に、そう絶対に――これからの僕はブラック雛太になってやる。  金輪際、人助けなんてしてやるもんか。  僕は身勝手気ままに生きるんだ、と、そう心に固く誓ったときだった。 「うわっ!」 
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