恋は忘れた頃に

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一週間後の夕刻。仕事を終え、駅からほど近い商工会議所へ向かった。 一週間前に彩音さんからメールが入る。 ひとり、大学生がウチの会社に興味をもったらしく面談がしたいと申し出があった。 いろいろ考えたあげく、無難なスカートスーツを購入して着ていった。 商工会議所の玄関近くにある1階の談話室を貸してもらい、彩音さんと職場体験の担当者と出会った。 ドアを開け、中に入るとすでに彩音さんと担当者のおじさんが中にいて、楽しそうに話をしているところだった。 「あの、今日、面談をやる相崎ですけど」 「やだー。みづき。まるで、自分が面談受けるみたいだよ」 「そうですよね」 そういうと、彩音さんとともに彩音さんの左横に座っていた男性の方もにっこりと笑っていた。 「はじめまして。職業支援の担当の森田です」 名刺をいただき、わたしも自身の名刺を渡した。 「今日お世話になります、mizuki factoryの相崎みづきです。よろしくお願いします」 「わからなかったらいつでも相談していただければ」 濃緑のベストにネクタイをしめた白髪まじりのおじさん担当者からおだやかな口調で話してくれた。 「ありがとうございます」 「こちらにおかけください」 彩音さんの座る右隣の椅子に促され、体をこわばらせ、ぎこちなさを隠しきれないぐらい変な座り方をしてしまい、横にいた彩音さんから堅苦しくしなくていいからと諭された。 彩音さんも隣にいるため、少しだけ緊張がほぐれる。 担当者が腕時計をのぞきこみ、そろそろ時間ですね、と教えてくれて、姿勢をただした。
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