244人が本棚に入れています
本棚に追加
「わかりました。こちらからの詳しい資料はあとでメールで送るので目を通しておいてください」
「ありがとうございました」
斉木さんは軽くおじぎをすると、森田さんが今日はこの辺でと言うと、ほっとした表情を浮かべ、帰っていった。
「どう、みづき。あの子」
見かねて彩音さんが言葉を発した。
「いいんじゃないんですか」
「勤務は一年なのでゆっくりと見守ってあげてくださいね」
森田さんがやんわりと話してくれた。
この先どうなるかわからないけれど、わたしもかけだしの会社の人間だし、お互いに成長しあえたらいいな、と強く思った。
そう思いながら目の前の仕事をやってきた、一週間後の月曜日だった。
約束の17時が近づくにつれ、こちらも仕事をしているものの、緊張してきたのか、いつもよりペースが遅くなっている。
「もう、そうじゃないのにっ」
いつもよりも大きな独り言が口から出てくる。
明日までにあげなければならないデータを入力して時計を見ようと入口に目をやると、ブルゾンにデニム、黒髪なナチュラルショートカットの男子が立っている。
最初のコメントを投稿しよう!