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「あの、こちらはmizuki factoryじゃないんですか?」
「ええ、そうですけど、何、勝手に入って」
カレンダーはエイプリルフールを過ぎている。
彩音さんが仕掛けたどっきりなのか。
目の前に立つ男子を見て、ぼんやり考えてしまった。
「あの、仕事の邪魔にならないようにそっとドアを開けたんですけど」
男子はそういうと、困った顔をしながら頭をかいた。
「え、で、どちら様で」
「県大情報経営学部3年の宮下亮介と言います」
「あの、そうじゃなくて」
困りながら男子は姿勢をぴんと正した。
「今日お世話になる予定だった斉木さんの代わりに来ました」
「え、斉木さん、来れないの?」
ビックリして席を立ってしまい、あやうくデータ原稿の元原稿を机から落としてしまいそうになった。
「言ってませんでしたか? 別のバイト見つけたって」
「はあ……?」
「ったく、あいつ、調子いいこと言って」
あんなに早く仕事がしたいっていうから、今日の仕事を増やして待っていたのに。
しかたない、今日は徹夜になるか。目の前の仕事の束を見つめ、溜め息がもれた。
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