恋は忘れた頃に

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「じゃあ、もう少し。今度の入力はちょっと量が多いけど」 「はい」 「テンプレートを君のパソコンに入れたから入力お願い」 「わかりました」 手元にある原稿を半分渡すと、軽くおじぎをして入力をしはじめた。 二人で入力をして3時間くらい経っただろうか。 軽やかなキータッチの音が消え、代わりに男子の声がする。 「社長、入力終わりました」 男子は体を傾けて、パソコン越しにこちらをうかがっている。 「ありがとう。明日の朝イチ納品に間に合うわ」 「いえ、喜んでいただいてうれしいです」 男子は疲れを見せないようにしたのか、やはりニコやかに笑みを浮かべていた。 「他に何かやることがあれば手伝いますよ」 「あとは校正とデータのすり合わせをするから、大丈夫よ」 「そうですか。間に合ったならよかったです」 「助かったわ。ありがとうね。斉木さんに伝えておいて」 元データ原稿を渡してもらうと、男子はまだ物足りなさそうな顔をしていた。 わたしが仕事をし始めるとパソコンの電源をおとし、後片付けをしてくれた。 「お先に失礼します」 「お疲れ様でした」
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