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雨が跳ねた音が、耳まで届いた。
窓の外には、まばらな人と、色とりどりの傘。どうも、豪雨のようだった。
窓際の席で、呑気にも外を眺めている自分が、どうにも気に食わない。私は隣に座っている彼を一瞥して、小さな声で言う。
「あとは日誌だけだから、先に帰ってても良いのに」
二人きりの教室では、消え入る程の薄い声も、反響するようだった。
「終わってないのに帰れないだろ。俺は予定ないし、大丈夫だから」
そっか、と呟く。本当は日誌など、もうとっくに書き終わっているのだ。
待たせている罪悪感と、自分勝手な想いが入り混じる。
今、彼を帰したら、彼が想いを寄せている女の子に、彼は告白される。どうしても、避けたい出来事だった。
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