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そして今日の営業は終了し、これから、そのショーの調教師が来る。やめてくれ。
嫌々待っているとドカーンと扉が開いた。
やってきた魚人は黄色い体に青い縦縞模様、……派手だ。
「というわけで、貴方の飼育係兼調教師のアゼリアです。チョウチョウウオの魚人で夢は小説家! 一緒に頑張りましょうねー土方さん。目指せ人間館のナンバーワン!」
そしていきなり俺の手を掴んで、ぶんぶんと握手してきた。
「離せ! 問答無用か! 恐ろしい奴だな」
何度も言うが恐ろしい力である。俺は渾身の力で振りほどいた。
アゼリア? は口を尖らせた。
「えー、敵愾心バリバリー。調教は信頼関係がないとできませんよ。僕を信頼して、ほら」
そういって、両手を広げる。ハグを求めているのか、強引な奴である。俺は呆れて言った。
「あのな、何をさせられるのかもわからないのに信頼なんかできるわけ無いだろ」
「あ、そうか。来たばかりの人間は人間館の事何も知りませんよね。じゃあ説明しますけど、僕らの目的は種の保存と生態教育と……」
「それは知ってる。だけど、レクリエーションのショーってなんだ。お前はそれを俺にやらせるために調教しにきたんだろう」
「いやん、いきなりそれを聞いちゃいますか。もっとお話ししたいのに、もう……直接的なお・か・た」
ツンと、鼻先をつつかれる。俺の拳が唸りを上げそうになった。
もちろんたやすく受け止められたが。……本で。
「あーこれはせっかちさんですねぇ。飼育日誌に書いておかなくちゃ。……じゃあ説明しますけど土方さんにやってもらうのはコレです」
これ、と突きつけられたのもやっぱり本である。
「これに書いてあることをやれってか?」
しかし、表紙は白紙。ペラペラとめくるも中身も何も書いていないようだ。
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