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飲まず食わずであれから1日。
ざっと50人ほど捕虜同士の腰と両手首を縄で縛られたまま数珠繋ぎで歩かされ、連行されたのは白い砂浜と海だった。
こんな時でなかったら泳ぎたいくらいの綺麗なビーチ。ここが処刑場とはいい趣味をしている。
「溺死とは、また古典的な……」
このまま海中まで行進させるつもりかもしれない。全員が繋がれている以上、一人が溺れれば、連鎖的に全員が溺れる。悪辣すぎる。
美しい景色とは裏腹に抱く感慨は、全くもって最悪なものだ。
「隊長、俺苦しいのは嫌ですよ」
後ろから部下がおびえた声で言う。俺だっていやだよ。げんなりとため息も漏れる。一緒に殺してくれという願いは叶えられたものの、よりによって一番苦しい処刑法だとは。覚悟していたとはいえ、部下たちの間にも緊張が走っている。
しかし、妙といえば妙だった。真後ろに繋がれていた副官が耳打ちしてきた。
「気づきましたか隊長。連中、何かを待っているようです」
「あぁ、随分イライラしている」
そこかしこの敵兵たちはしきりに海に目をやり、小声でせわしなく話し合っている。さながら海から来る何かを待っているように。
「捕虜収容船かな」
後ろから窮地に希望を見出したかの如く、期待に満ちた部下の声がした。
(んな訳がない)
敵兵たちの顔色を見ればわかる。勝ったくせに焦燥感に張りつめた面。恐ろしいものを見るように海を見つめる眼差し。
おまけに大っぴらに口に出すのも憚れるのか、小声でこれから来るモノの内緒話を交わしている。
絶対ろくなもんじゃない。
どうせ殺される身だが、いらぬ恐怖を味わうのも御免である。
(サディストの処刑人が船でやってくる、ってオチはやだな)
神様仏様、どうかサディスト野郎に部下たちを拷問させないでください。祈るしかないわが身がもどかしい。海から一体何が来るんだ。
……答えは一時間後に分かった。
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