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その何かを待つ間、灼熱の砂浜に座らされて一時間。
すでに拷問である。ケツに火が付きそうだ。
そんな具合に熱中症に眼がやられつつあったので、最初は見間違いかと思ったのだ。遠くの波間に巨大なイガグリがひょこんと見えた気がした。
(ン?)
何度か目をこするも……気のせいじゃなかった。
瞬きする間にイガグリが二つになり、三つになり、四つになり……さらに増えながら、すさまじい勢いで波を弾き飛ばしながらビーチに突進してきたのだ! 桃太郎の桃のごとく、どんぶらこと。ただ勢いも大きさも比べ物にならない。
イガグリたちのスピードを証明するように、波がかき分けられてすさまじい水柱が立ち、その轟音は耳を覆いたくなるほどだった。縛られているのでそれは叶わなかったが。
恐怖から反射的に立ち上がろうとするも、繋がれた部下たちもバラバラのタイミングで立とうとするもので、結局全員がもんどりうって倒れ込んだ。
敵兵たちはそれを咎めなかった。なぜなら、敵兵たちも度肝を抜かれていたからだ。
イガグリたちは、砂浜にすさまじい勢いで揚陸した。ドガーンと大地が揺れた。衝撃にビーチの砂が舞い上がり、辺りは一面もうもうとした 砂で目もあけられないありさまだ。
しばし、せき込む。何が何だか全くわからなかった。
砂がようやく落ち着き、見えたものと言ったら砂浜に鎮座する、背丈の三倍はあろうかという、やはりイガグリだった。
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