戦争に負けた。無残な負け方だった。

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「人間館とは、絶滅の危険がある人間を保護、展示、繁殖するための施設だ。君たちは戦争で数を減らしすぎたんだ。保護が必要なほどに。これから君たちは、海底にある人間館で保護される」 「はぁ……ッ?!」 「なに、地上より餌には事欠かないし、一人一空気槽だから人口過密の殺し合いにもならない。飼育係もつくし、至れり尽くせりだ」  熱帯魚野郎は、いかにもいい話だと言わんばかりに得意気だ。 (黙って聞いていれば――!)  せっかく生き残ったのに、今度は魚に飼い殺しにされるだと? そんなの許せるか! 「ふざけんな馬鹿野郎」  俺は怒りのあまり、奴のぬめる皮膚を引っ掴んで投げ飛ばそうとした。  しかし、逆に投げ飛ばされたのは俺だった。視界がぐるりと回り、ダン! と背中に鋭い痛みが走る。  隊長! と部下たちが叫ぶも、俺を人質に取られているからか動けないようだ。こいつ、手慣れている……! 「我々の人間調達先は、君たちのような軍人種の捕虜なんだ。こちらに引き渡された途端に暴れる者も多くて、我々は対人戦闘術を取得した。それに、ただでさえ栄養失調気味でふらついている君たちには負ける気はしないね」 「はっ、どうりっで、捕虜たちが一人も帰ってこないわけだ……っ」 「全員、食料と引き換えに我々に売られたよ。抵抗も無駄だった。可哀相にね」  いかにも同情していますと言いたげな口調に、さらに憤ったが、関節を極められて動けやしない。  ならばと、部下達に一斉にとびかかるように目で命じてみるも、奴は機先を制するように口を開いた。 「数で掛かればこの潜水艦を占拠できると思うかい? それは無理だな。そんなことになれば、我々はこの船を解体する。この船は人間に空気を吸わせながら運搬するための船だ。今、船が分解したら、君たちはおぼれ死ぬ。我々は海中でも息ができるから問題ないが」   ……嘘じゃなさそうだ。俺は目を閉じた。くそが、全部夢ならいいのに。しかし、背中に感じる床の 冷たさがこれが現実だと告げていた。 「君は一番調教のし甲斐がありそうだね。ショーが楽しみだ」  この上何をさせる気だこいつらは……。    絶対に逃げてやる。
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