「教室の戸を開けたら、そこには」で始まる小説

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教室の戸を開けたら、そこには、珍しく女子に 囲まれ話す岬の姿があった。当然大和にとって 気持ちの良い光景ではないが、まさか蹴散らす 訳にも行かず、扱いに困惑しながら一歩を踏み 入れた時、 「大和?あー…好きじゃねぇし興味もねぇな」 まだ大和に気付いていない岬が、耳を疑う台詞 を吐いた。 (好きじゃ…ねぇ?…興味…ねぇ?) それはまるで、鈍器ででも殴られたかのような 衝撃で、大和は一瞬にして暗闇に閉ざされた世 界を、ふらふらとした足取りで戻った。 「おい…やべぇぞ国王」 「…この世の終わりみてぇな顔してんな」 茫然自失といった様子の大和を見ながら、授業 中にも関わらず、翔と神羅がひそひそと。晃司 は寝ている。 「王子と何かあったんか」 「まぁ…それしかねーだろうな」 やがて休み時間となり、一点を見つめたまま微 動だにしない大和に近付くと、 「好きじゃねぇ…興味ねぇ……好きじゃねぇ… 興味ねぇ…」 ブツブツと呟かれるそれ。 二人の呼び掛けにも、反応は全く見られない。 「怖っ…俺ちょっと王子んトコ行ってみんな」 神羅が頷き翔が駆けて行った刹那、 「つ…土田!勝負しろ!」 ズカズカとやって来た三人の男たちが、次々と 名を名乗った。こういう時に限って面倒はやっ てくるもの。 「き…聞いてんのか…コラ!」 (ビビってんなら来んなよ) 「あのな…土田は今それ所じゃねんだ」 呆れ混じりに神羅が言うも、彼らが去る気配は ない。 そして翔と共に岬がやって来た時、 「立てよコラ!てめぇのケンカなんか見た事 ねぇんだ!ほんとは弱いんじゃねぇのか!?」 大人しい事で調子に乗ったのか、一人が大和の 胸ぐらを掴み、 「どこが狂犬だって?見せてみろよ!」 「…誰に向かってモノ言ってんだコラ!」 みるみる顔色の変わった岬が、その男の横っ面 を殴り飛ばした。 「おい大和、どうした?」 「…みさ…き…」 「おぅ、何かあっ…」 ガターン! 大和を覗き込んだ岬が椅子と机にぶつかる。も う一人の男の仕業だ。 「あーぁ…知ーらね」 離れた席から傍観していた晃司が呟く。 岬を蹴り飛ばした男だけが大和に殴られ、あっ という間に気絶すると、残りの二人は彼を担ぎ 退散。 「お願い岬…捨てないで」 「…あ?」 ちなみに、岬が女子に訊かれたのは、大和が好 きな菓子は何か、であった。                     了
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