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(はー…やっぱりキレイだなー…)
佐渡海は今日も、彼女を見つめながら溜め息を
ついていた。お相手は、中学の頃に一番人気を
誇った吉岡真理亜だ。
出会って親しくなってからは長いが、授業中は
ついこうして目がいってしまうのである。
吉岡には未だ恋人が出来た例がない。いつかは
ダブルデートをと夢見る佐渡にとって、誰が彼
女を射止める事が出来るのかが、日々の学校生
活の中で一番の興味であるといっても過言では
なかった。
(ギャップがね…まぁあたしはそういう所がまた
好きだけど…それを受け止めれる屈強な男子が
いないんだなぁ…)
そしてふと思い出した、中学時代のある日。
まだ吉岡と話した事のなかった佐渡は、偶然に
目撃してしまった。男子と二人きりでいる彼女
の姿を。
きっと告白に違いないと、悪いと思う気持ちに
好奇心が勝り、つい伺ったのだ。
ーーー好きなんで、俺と付き合って下さい
それはダイレクトな言葉で、遂に美女に恋人が
と、佐渡は興奮しながら見守ったのだが、
ーーー何で?
顔色一つ変えない吉岡が、そう発した。
ーーー…へ?
ーーー何であたしを好きなの?
ーーー…いや…何でって…言われても…
ーーー理由もないのに好きなんて言われても、返事
しようがないんだけど
ーーー…すいませんでした
それからも、何度も彼女に告白をする男子がい
た様だが、ずっとこんな調子で、高校に入学し
た頃には噂が蔓延しており、誰も近付かなくな
ってしまったのだった。
「ねぇ真理亜ちゃん…恋人欲しいとか思った事
ないの?」
休み時間、佐渡は思い切って尋ねてみた。
「そりゃああるよ」
(え!?あるんだ!?)
「でも…全員振ってるよね」
「だってさぁ…何であたしを好きなのか言えな
いって事は所詮顔でしょ?可愛いもブスも若い
うちだけだよ。大人になってからのが人生長い
んだしさ」
(カッコいいなー…けどそれ理解出来る男子が
いるかなぁ…)
「まぁあたしとしては、お菓子や洋服作って
あげたい願望はあるんだけどね」
「…そうなんだね」
いつかはこんな彼女にも、理屈抜きで夢中にな
ってしまえる程の相手が現れて欲しい…そして
悩める彼女を激励したい…佐渡は、そんな事を
思ったのだった。
了
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