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バイトから帰宅し、大和の部屋へ行く前に岬の
携帯が鳴った。
短い着信音はメールのものだ。
「…ん?」
表示されているのはアドレスのみで、しかも…
「…あ?俺の?」
それは岬自身の。
「…どーゆー事だよ」
岬はドキドキしながら開く。
信じらんねぇかも知れねぇけど、俺は未来のお
前だ。10年後から送ってる。
「…マジか」
岬は目を見開き続きを読む。
俺は後悔してんだ。大和にもっと好きだって言
ってやれば良かったって…
何が起こるのかは事情があって言えねぇけど、
頼む、今すぐ愛してるって、抱いてくれって、
俺をお前ので気持ち良くしてくれって言ってや
ってくれ。
じゃねぇと大和と俺が…あんな事に…
これ以上は伝えられねぇ。けど全部お前にかか
ってんだ。
頼んだぞ、16歳の俺。
メールはこれで全文だ。
岬は信じがたい気持ちで、ガリガリと頭を掻き、
「…マジなのか?これ」
何度も読み直す。
「…つうか…俺がコレ言わなかったら何が起こ
んだよ…けど…こんだけ必死な感じなら何だ…
別れるとか……振られる?…にしたってこんな
ん言えるか!」
やがて風呂を終え、寝る時間が近付くにつれ、
気になり落ち着きのなくなる岬とは裏腹に、物
凄く期待をしている大和。何故なら、一時的に
自分のアドレスを岬のそれに変え、メールを送
った張本人だからだ。
アルファベットのOを数字の0にする等の小技
を駆使して。
そして遂に、岬が口を開く。
「お前…俺が好…きとか愛…してるとか…そー
ゆーの言わねぇと俺を嫌になんのか」
(来たぁーーーーー!!)
「なる」
そんな訳はないのだが、即答する大和。
岬はみるみる赤面。
(早く!早くねだって来い!)
「…愛…し…てるぞ…」
「ありがとう岬…俺も超愛してる。その先も聞
かせて?じゃないと、未来の俺と岬に大変な事
が起こっちゃうから」
「そうだよな……あ?」
「あ」
「…何でお前がんな事知ってんだよ」
タラリ。
「…何が?」
岬は大和にじとりとした視線を送ると、先程届
いたメールを再び開き返信を押した。
鳴り響く大和のメール着信音。
「メールだぞ」
「…言って?」
この期に及んでまだ。
「一生言わねぇ…あ、何でだよ!そーゆー感じ
じゃねっ…あ…おいちょっ…んぅ…」
どちらにしても結局岬は押し倒され、夜は更け
て行くのであった。
了
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