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その日は、たまたま他に誰もいなかった。
屋上で武蔵と二人きりになってしまった神羅は、
無口な彼と、どう過ごそうかを悩む。
「天気いいなー」
「腹減ったなー」
武蔵は頷くだけ。
最近盛り上がっているのは恋愛話だ。これなら
何かを答えるかも知れないと神羅は考えた。
「なぁ武蔵…恋してねぇの?」
デカい図体には不釣り合いな、捨てられた子犬
の様な瞳で見つめられ、たじろぐ神羅だが、
「何だよ…何か悩んでんなら聞くぞ?」
武蔵はただ、頭を振るだけで。
「どっちだ…恋してんのかしてねぇのか…」
「言わない」
(ガーン)
「……そう…か」
(あ…神羅が傷付いた顔をしている…違う…違う
んだ…誰にも言ってはいけない人を好きだから
…だから…)
「まぁ俺に恋愛相談なんかしたって、何も出ね
ぇしな…やっぱ頼りんなんのは土田だろ?」
(もっと言えない!)
武蔵は勢い良く立ち上がり、屋上を飛び出して
行った。
「嫌われてんのか?俺」
そんな神羅の呟きは、誰も知らない。
了
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