「ある日手に入れた不思議な道具」

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① 「…あ?タイムマシン?」 「うん、B町の森で発見されたんだって」 大和は早速、岬と電車で出掛けた。 「…ほんとにあった」 「…マジか…すっげぇな」 マンガや映画でしか知らない、ツタが絡み(こけ)む した大きな物体が、嘘みたいにそこにあった。 「何で誰もいねぇんだろうな」 「うん」 テレビで流れた筈なのに、辺りに人の気配が全 く感じられないのが不思議だったが、そんな事 は大和にとって重要ではなく。 「乗ってみる?」 「乗るってお前…動いたらどーすんだ」 「過去に行くの」 「…過去?」 「うん、岬とずっと仲良くしてたって風に塗り 替えるの」 岬は何も言わなかった。 「ヤだ?」 「…帰って来れる保証がねぇ」 「…でも…一緒に行けば一緒にいれるよ?」 「今いるココの俺らはどうなんだ、消えんじゃ ねぇのか」 「……」 「家族と仲間は?」 「……」 「色んな事あったから、今こうやって一緒にい れんじゃねぇか。あれはあれで、俺らに必要だ った。塗り替えて記憶なくなって、あん時の俺 らはどこに行くんだよ、何の意味あんだ。この 先何があったって俺はお前を愛してる。それじ ゃダメか」 大和は号泣しながら岬を抱き締めた。 「…そうだね、記念に写真だけ撮って帰ろっか」 「おぅ」 「……夢か…」 目覚めた大和は忘れないうちにと、深夜にも関 わらず岬を揺さぶる。 「おはよう岬、ねぇ、タイムマシン見つけたら どうする?」 「…あ?…何だ…何時だよ…」 「乗りたい?」 「…あったら考える…あったらな…」 「ねぇ過去と未来どっちに行き…」 「うるせぇ…まだ寝かせろ…」 背を向けた岬を抱き込んで、 「岬はどこで会っても岬だね」 「…何の…話…だょ…」 やがて、すぅすぅと聞こえ始めた寝息に、大和 は微笑み目を閉じた。                     了
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