「ある日手に入れた不思議な道具」

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② 「なぁ、前から思ってたんだけどな?このビン 何だ?」 大和の部屋の、岬のヘアアクセサリー置場の奥 の方に、それはひっそりとあった。 「それねぇ…惚れ薬」 「…あ?なに薬?」 「惚、れ、ぐ、す、り」 (何だそれ) 「飲ませた相手が好きになってくれるんだって」 「…バカじゃねぇの?」 「ほんとだよ?持ち歩いてたらラベル剥げちゃ ったけど、ちゃんと惚れ薬って書いてあったん だから」 大和は、小学6年の夏に近所の公園で拾ったの だと、嬉しそうな表情で語る。 「でね?漢字が読めなくて母さんに教えて貰っ て知ったの」 だが岬はそんな事よりも、 (持ち歩いてたってどーゆー事だよ) 気になったのはそこだ。 「お前まさか…こんな変なモン誰かに…」 「岬に飲んで欲しかったけど、出来なかった」 (俺かよ) 「…そうか…よく思いとどまったな」 「お腹壊したらなって…」 (そこかよ!こーゆーモンの力借りんの嫌だから とかじゃねぇのかよ) 「でも使わなくても俺を好きになってくれた」 「……」 「使ったら、好き好き言ってくれる様になるの かな?」 「…あ?とっくに腐ってんだろ、捨てろこんな モン」 岬は窓からビンを放り投げ、 「ちょっとどうして!?俺のロマン!」 大和は部屋を飛び出して行った。 「何がロマンだバカ…」 呟きながら外を伺う岬。 大和はキョロキョロと見回し、必死に探してい る。 「あった!良かった割れてねぇ!」 大事そうにビンを見つめ、汚れを落とす様子を 見ながら、岬は声を漏らし笑うのだった。 了
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