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私は夫と2人で暮らしている。
夫とは5年前に結婚した。もう新婚とは言えない年数だ。
夫の職業は料理人。
引退した師匠に代わって、洋食屋のオーナーシェフを勤めている。
夫が料理人を目指した理由を、こう話していた。
『自分の料理を中心に、みんな笑顔で食卓を囲んで欲しい』
それは共働きの両親と一緒に食卓を囲みたかった、彼の願いだったのかも知れない。
そのおかげか、プロポーズの言葉は
「毎日、僕と一緒にご飯を食べてください」だ。
思わずお腹をかかえて笑ってしまったことを、今でも根に持っているらしい。
でもその言葉に忠実に、毎日私達は一緒にご飯を食べた。
朝と晩、どんなに遅くなっても、毎日。
それは私達の幸せな日々の象徴であった。
そんな夫と、今日もごはんを食べる。
今日は夫が休みの日。
手塩をかけて、夫は沢山の料理を作る。
ハンバーグ、クリームコロッケ、ラザニア・・・沢山の私の好物が並ぶ。
「こんなに、いいの?」と聞くと、夫はにっこりと笑う。
「君の美味しそうに食べているところが好きだから」
いつも決まって言う言葉。
でも今日は、最後にこう付け足した。
「最後だからね」と。
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