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ーーザァァァァァァ
雨の日は憂鬱だ。
ジメジメするし、髪もくせっ毛だからボサボサになる。
それに外に出たら濡れるし。
「春川! おい、春川!」
「! っはい!」
社会の授業中、雨に濡れる紫陽花を眺めていた私は、先生に呼ばれていたことに気付かなかった。
勢いよく立ち上がった私をクスクスと笑う声が聞こえる。
私はそっと着席して、恥ずかしさに耐え切れずうつむいた。
私を見る視線が幾つか体に突き刺さる。
「聞いていたか?」
「……。すみません、もう1度言ってください」
「初めて世界を1周したのは誰だ?」
「マゼラン一行です」
私は間髪入れずに答えた。
クスクスと笑う声は聞こえなくなったが、やっぱり顔は上げられない。
「……正解だ。だからと言って聞いていないのは良くない」
「すみませんでした」
突き刺さる視線も無くなったけれど、何故かまだ感じる視線に恐る恐る顔を上げると、廊下側の席に私をじっと見つめる1人の男子が目に付いた。
それに気づいた彼は慌てたように視線をそらせた。
授業を進め始めた先生に1度視線を移してから、私はまた窓の外を見る。
激しく降り続ける雨を眺めて、やっぱり雨は嫌いだ、と思った。
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