薬歴その1 「薬剤師って何をしたらいいの?」

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 私がクローバー薬局に入社したのは、平成二十八年四月一日。時を同じくして、その日「かかりつけ薬剤師」の算定が開始となった。これは薬局業界に大きな変革をもたらすものだった。  患者が特定の薬剤師を「かかりつけ薬剤師」と指名すると、薬局は算定が取れるようになった。これは、複数の薬局で薬をもらうのではなく、一つの薬局、一人の薬剤師に集約させる事で、相互作用の回避や、患者ひとりひとりに合わせた服薬指導につなげ、患者の健康を向上させる目的がある。薬局経営者にとっては、収入源を増やせる算定が増えたと、躍起になって算定を取るよう動いていった。  かかりつけ薬剤師の算定を取るには、まず患者を薬局に集客させなければ始まらない。ある薬局では、内装、外装をすべて改装し、入りやすい環境を整えたり、別の薬局では、まるでカフェと見間違うような雰囲気で、実際に入るとコーヒーの香りまでしてくるような薬局も出てきた。別の薬局では、患者と話す投薬カウンターを完全密閉個室とし、患者情報が絶対に漏れませんというキャッチフレーズで集客するものもあった。     
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