薬歴その1 「薬剤師って何をしたらいいの?」

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薬歴その1 「薬剤師って何をしたらいいの?」

「春香、あなたに渡すものがあるの。ちょっと事務室に来なさい」  朝礼が終わるとクローバー薬局の薬局長である久美子さんは、神妙な面持ちで白封筒を手に調剤室から事務室に私を呼びつけた。久美子さんの後ろをついて行くその間、右手に握られた白封筒をじっと見つめていた。私の勤めているクローバー薬局では、給料明細をはじめ会社から渡される紙は会社のイメージカラーである薄いグリーンにすべて統一されている。しかし、一つだけ例外があった。白色の封筒、白色の紙で渡されるのが「白紙」こと退職勧告である。 「もうわかっていると思うけど、白紙がきたわ」  この時期に呼び出され白い封筒を見れば、それが白紙である事は容易に予想がついた。それでも、久美子さんの口から「白紙」と言われるまで、まだそれが退職勧告ではないのではないかもしれないという淡い期待を持っていたのだが、あっけなく打ち砕かれた。 「あなたは入社してからこの三年と五ヶ月間、あなたは一人も指名が取れなかった。だから、社内の規定によりあと一ヶ月指名が取れない場合は辞職してもらう事になるわ」     
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