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はじめての記憶
「はじめまして。気分はどうだい?」
起動して最初に認識したのは、男性の声。
暗闇が開かれ、声の主の顔を網膜がスキャンする。
プリインストールされた情報から、彼をマスターと判定。
「おはようございます、マスター。問題ありません」
声帯を震わせ、応答。発声に問題はなし。
上体を起こし、立ち上がり全身の駆動を確認。こちらも問題はなし。
「ああ、おはよう。僕のもとに生まれてくれたことに、心からの感謝を」
そう言って、口を笑みの形にしたマスターが、私に向けて右手を上げようとする。
しかし、その動作は途中で固まった。
「マスター、どうしました? 私に何か不具合がありましたか?」
「あぁ……いや、そうだな。不具合とも言えなくもないが……」
首を傾げる私から、マスターは目を逸らす。
「少し待っていなさい。何か着るものを用意しよう」
身に着けていた白衣を翻すようにして背を向けたマスターが部屋を出て行く。
自動で開いた扉が閉まり、私は一人残された。
どうやら、私のこの身体が女性を模したもので、裸体であることが問題だったようだ。
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