最高のプレゼント

23/28
前へ
/483ページ
次へ
「早くおいで。ケーキに蝋が落ちちゃうよ?」 「あ…うん」 理解はできないけれど蝋が落ちたら大変だし、と、とりあえず指定された場所に座ることにした。 重くないかな…?なんて、余計なことを考えてる間にも蝋はどんどん垂れていく。 「朱里、早くフーッして。できる?」 「できるに決まってるでしょ?私17歳なんだよ?」 「そう?子供の頃は火怖いー消せないーって泣いて俺と二人で消してたのにね」 懐かしい…そんなこともあったな。 思い出の中の私は、火が怖くてたっくんに寄り添いながらシクシク泣いて。 たっくんはそんな私を見てクスクス笑いながら『一緒にフーッてしよ』って言ってくれたんだ。 遠い日の記憶が蘇れば、不思議とあの頃と同じ気持ちに戻って。 「もう火は怖くないけど久しぶりに二人で消したいかも…」 「俺もそう思ってたとこ。じゃあ一緒に消そ」 「うんっ」 まるで子供の頃に戻ったみたいに二人同時に息を吹き掛けると、17本のロウソク達に灯る火は見る間に消えていく。 そして最後の一本が消えたとき… 後ろから降ってきた、たっくんの声。 「誕生日おめでとう。大好き…」 今日だけで何度その言葉を言われたのか分からないけれど、それでも一回一回ドキドキして嬉しくて… ケーキより甘いその声に、溶けそうになる。
/483ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1758人が本棚に入れています
本棚に追加