79人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
始まり
目が悪くなかったら。
そうしたら、死ななかったかもしれない。
※
(また詰まっちゃった…)
長い髪を洗い流していると、排水口から水が溢れてきた。泡が目に入るので、半分目を閉じながら、排水口にかぶさっている網を探る。
(やだ、気持ち悪い。)
自分の髪の毛とはいえ、網を塞いでいる髪を手でよけるのは本当に嫌なものだ。
麻那は水が流れるすき間を作ると、なんとか髪を洗い終えた。
そうだ、もし麻那の視力が0.1ではなくて、コンタクトがなくてももう少し見えたなら。
排水口を塞いでいた長い髪が、漆黒の黒で、ストレートな事に違和感を覚えただろう。なぜなら見慣れた麻那の髪は、カラーリングした焦げ茶、美容院で半年毎にかけるデジタルパーマでカールがかかっているのだから。
最初のコメントを投稿しよう!