始まり

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始まり

 目が悪くなかったら。  そうしたら、死ななかったかもしれない。           ※  (また詰まっちゃった…)  長い髪を洗い流していると、排水口から水が溢れてきた。泡が目に入るので、半分目を閉じながら、排水口にかぶさっている網を探る。  (やだ、気持ち悪い。)  自分の髪の毛とはいえ、網を(ふさ)いでいる髪を手でよけるのは本当に嫌なものだ。  麻那(まな)は水が流れるすき間を作ると、なんとか髪を洗い終えた。  そうだ、もし麻那の視力が0.1ではなくて、コンタクトがなくてももう少し見えたなら。  排水口を塞いでいた長い髪が、漆黒(しっこく)の黒で、ストレートな事に違和感を覚えただろう。なぜなら見慣れた麻那の髪は、カラーリングした焦げ茶、美容院で半年毎(はんとしごと)にかけるデジタルパーマでカールがかかっているのだから。
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