03 俺の歌を聴け

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「う、うまい……」  十八番(おはこ)だという人気バンドのヒット曲を高らかに歌い上げる北大路。  その歌唱力に私は圧倒された。  声質がわりと低く聞こえるため勘違いをしていたけれど、北大路が得意とするのはむしろ高音域だったのだ。  男っぽい歌声を期待していたのに、かなり少年っぽい。でも、甘さの中にかすれた切なさもあって、かなり色気のある声だ。  しかも、しゃくりやビブラートといった歌唱テクニックも駆使して歌うから、かなり聴きごたえがある。  悔しいけれど、認めざるを得ない。こいつはうまい、と。  きっと大したことない、下手であってほしい――そう思っていたから、諸手を挙げて絶賛することはできないけれど。  サナなんてとびきりのタンバリンテクニックとともに声援を送っている。聴衆になれるサナが羨ましい。私だって、歌っているのが北大路でなければ手拍子打って盛り上がりたい。  私の胸は震えていた。この震えを私は知っている。これは、素晴らしいものに出会ったときの震えだ。  とびきり魅力的な新人声優の声を初めて聴いた時のような、ここ数年で一番のヒット作になりそうな予感のするアニメの一話を見たときのような、そんなとびきりの瞬間にだけ感じるドキドキだ。  ドキドキして、目まで潤んでくる。 「どうだ姫川!」  歌い終えて北大路は、息継ぎをするより先に私にそう尋ねた。
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