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サァーーー…
雨が降っている
放課後、1人教室で日誌を書く。
うちのクラスは日直が日に1人。
漫画のような甘酸っぱい展開もなく、ただ黙々と授業の様子や担当の先生、今日のプチニュースなどを書き連ねる。
普段は日直が回ってきても休み時間に書きおわらせ、さっさと家に帰るなり友達と喋るなりする。
でも、今日は。
なんとなくゆっくり日誌を書いた。
「ちーちゃん、日誌まだー?」
廊下の方からちーちゃん、と私を呼ぶ友達。
「うん、まだかかりそう。ごめんね、今日は先帰ってて」
私の友達は、それを聞いて笑顔で走っていった。
遠くの方で、「ちーちゃん、今日は別で帰るって」「それなら早くゆっててほしいよねー」「確かにね」という会話が聞こえる。
他意はないのだろう、私もよくそんな会話をする。
私は、日誌に目を戻し、少し深めに息を吐く。
大した意味もなく、窓の外を眺める。
サァーーー…
雨の音が聞こえる。
イーチ、ニーィ…
耳をすませば、遠くから運動部の校舎内で練習しているのであろう掛け声が聞こえる。
明日の日直の名前まで書き終え、教卓の上に日誌を置く。
誰もいない教室で、ただ何となく教卓の前の机に腰掛け、教室全体を見わたす。
なんてことない、見慣れた教室。
誰が書いたのか、後ろの黒板には落書きがたくさん。
机の横には何もかかってない。
机の上には落書きひとつない。
少しして、私は机から降りた。
雨の音を鳴らす窓を閉め、黒板に書いてある日付を明日のものに変える。
電気を消して、廊下に出る。
「さむっ…」
冷たい風が背を渡る。
廊下の窓から、雨が振り込んでいる。
もう一度教室の中を眺め、扉を閉めて歩き出す。
まだ寒い、春にもならない2月下旬。
私の高校生活は、明日卒業を迎える。
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