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物の見事にかっさらわれて一季さんの家に連れ込まれたけど。
しーん。え、何を話せばいいの、俺話すことないし謝ることもしてないし、そもそもあの変な女の人が訳わかんないこといって、それで、一季さんも多分一緒にご飯食べてたから、追い払ったってことなわけで……
やばい泣きそう、ほんとすぐ泣く俺。
「ごめん、嫌な思いさせて。」
抱きしめられて、やっぱり泣いちゃって。ごめんなって何度も言う一季さんに、分かったとか許すとかも言えなくて、なんで今謝るんだよって。
きらいだ、人間なんて。
傷付けるし裏切るし、一季さんだってそうだ、俺、女の人とご飯行くなんて聞いてない。
その程度なのかよ、言う必要もないって、そんな程度なのかよっ……!!
「哉……?」
「……みんな、俺の事裏切る!!嘘つく!!隠す!!俺には言わない!!みんなみんな、俺なんか、その程度なんだ!!一季さんだってそうなんだ!!」
俺には花しかいなかった。
父さんも母さんも、俺を芸能界に入れた事をずっと悔やんで、俺に対していつも、最後まで気を遣ってた。母さんが病気だった事も知らなかった。
ばあちゃんと花だけは俺に嘘とか隠し事とか誤魔化しなんかしなかった。
ジャックだって、親友だけどお互い言わない事もあるし。
ずっと、俺は寂しくて、花しかいなくて、でも花も花の人生があるからって思ったら、日本に行くって言われた時止めることなんか出来なくて。
「俺は哉をそんないい加減な気持ちで好きだって言ったわけじゃない。」
「っ、でも女の人とご飯行ったんじゃん!俺には何も言わないで、行ったんでしょ!」
「言わなかった事は謝る。余計な不安は与えたくなかったからだけど……哉には全部ちゃんと、言った方がきっと安心するんだな。」
「別に無理して言えなんて言ってない!!」
「そうじゃねーっつーの。泣くほど嫌なら嫌なこと全部言ってくれ。ちゃんと聞くから。」
そんな風に優しくされたら、絆される。困ったように笑って、泣くなよ、ってキスされたら、許しちゃうじゃん。
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