雨の日はお好きですか?

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(水溜り…) ここ最近、梅雨のせいか雨が降り続いている。予報では明日も雨。 貴方はシトシトと雨が降っているにも関わらず、持っている傘をさそうとしない。 雑踏から少し外れた路地に立ち、ただ雨の日が作り出す、小さな小さな海をボンヤリと眺める。 少女というには幼すぎず、女性というにはあまりにも幼い貴方。 ポニーテールの毛先から、時折首筋に落ちる雨粒が、一定のリズムを刻む。 そんな貴方は、日々の生活の中で最近違和感を覚え始めていた。 “私はなんで生きているの?” 病んでいる、そんな一言で表せられるものではない。 何も変わらず繰り返される毎日に疑問を投げかけているのだ。 貴方は水たまりに近付き、持っていた傘の先で水面に文字を書いた。 “私はなんで生きているの?” 書いたそばから消えていく文字が、まるで自分のように感じられた。 誰も見ていない。誰にも見られていない。 そして、そのあまりにも儚い姿に貴方は苦笑する。 その笑みが何故浮かんだのかはわからない。 あまりにも子供らしいその行動に対してなのか、それとも何かにすがろうとした自分への哀れみからなのか。 兎にも角にも貴方は文字が消え終わったのを見て、その場から立ち去ろうとした。 雨は、少し強くなっていた。
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