君のいる方向

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「神尾航くんが亡くなりました」 そう担任が告げたのは高2の春のことだった。 1年の3学期からほとんど学校に来なくなっていた航を、星奈はずっと心配していた。 ”闘病中らしい。あまり良くないようだ”、“だからたまに学校に来ても、先生も好きにさせてる”と言う噂は星奈の耳にも流れてきたが、いつか普通に帰ってくる、そう思っていた。 その時はちゃんと告白をしよう。 星奈はそう心に決めていた。 担任の言葉も最初はまったく飲み込むことができなかった。 机の上に飾られる花を見て、星奈はただただ不思議な気持ちを抱えていた。 放課後、一人の教室でそっと机をなぞると、まだそこに航がいるような気がした。 お守りのコンパスを握りしめ、深く呼吸をすると、自然と涙がこぼれた。 コンパスはくるくると回り、いつものように赤い針を止めた。 「あれ、こっち、北じゃない」 涙でにじんで見える針の行方をそっとたどった時、そこに航が立っていた。 「えっ?」 驚いた表情を見せた星奈と同じくらい目を見開いて 「……もしかして俺のこと見えてる?」 と彼は言った。 こくりとうなずいた星奈を見て、航は 「へー、すげー!」 と笑った。
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