15人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
「神尾航くんが亡くなりました」
そう担任が告げたのは高2の春のことだった。
1年の3学期からほとんど学校に来なくなっていた航を、星奈はずっと心配していた。
”闘病中らしい。あまり良くないようだ”、“だからたまに学校に来ても、先生も好きにさせてる”と言う噂は星奈の耳にも流れてきたが、いつか普通に帰ってくる、そう思っていた。
その時はちゃんと告白をしよう。
星奈はそう心に決めていた。
担任の言葉も最初はまったく飲み込むことができなかった。
机の上に飾られる花を見て、星奈はただただ不思議な気持ちを抱えていた。
放課後、一人の教室でそっと机をなぞると、まだそこに航がいるような気がした。
お守りのコンパスを握りしめ、深く呼吸をすると、自然と涙がこぼれた。
コンパスはくるくると回り、いつものように赤い針を止めた。
「あれ、こっち、北じゃない」
涙でにじんで見える針の行方をそっとたどった時、そこに航が立っていた。
「えっ?」
驚いた表情を見せた星奈と同じくらい目を見開いて
「……もしかして俺のこと見えてる?」
と彼は言った。
こくりとうなずいた星奈を見て、航は
「へー、すげー!」
と笑った。
最初のコメントを投稿しよう!