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「えっ?」
「俺と付き合うってことは、俺が成長しないままこの世界にずっといるか、お前が俺の世界に来るかしかないってことだ。それに星奈が今日みたいに体調を崩しても俺は助けてあげられない。そういうの、耐えられないよ」
涙がにじむその目を見て、星奈ははっとして航の手を掴もうと手を伸ばした。
「ごめん!」
その手は空でかするような音を立て、航のもとに届くことはなかった。
そんな星奈の姿を見て、航は小さく苦笑いを浮かべたあと息を吐き、改めて星奈の目を見据えた。
「本当はあの日。星奈が俺に気づいた日。ちょっと学校に寄ってみただけなんだ。あっちに行く前に」
そう言って天を指差す航は、柔らかな瞳で星奈の目を見つめた。
「でも、星奈に気づいてもらったら……少し嬉しくて。ずいぶんと長居をしてしまいました」
冗談めかした笑顔で放たれたその言葉に、別れの気配を感じ星奈は慌てて言葉を発した。
「嫌!私、航とずっと……」
「星奈。俺も、星奈が好きだ」
言葉を遮られて届いた声に星奈は息を飲んだ。
「お前のおかげで、俺は幸せになれた。だから、今度は星奈が幸せになってほしい。好きだから、付き合えない。好きだから、一緒にはいられない。好きだから……消えるよ。星奈が前に進めるように」
気付けば二人の頬は涙で濡れ、お互いの顔すら、もうぼんやりとしか瞳に映らなくなっていた。
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