15人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
星奈が最後に航に会った日から半年が経過していた。
「星奈ー!どこ行くの?」
母の声に、
「ちょっと裏山行ってくるー」
と答えると
「またー?気を付けてよー?」
と呆れたような声が聞こえてきた。
裏山の道を歩くと、コンパスはゆらゆらと揺れながらいつもの道を指し占めていた。
山頂に立ち、空を見上げると一面の星空が星奈を出迎えた。
「今日はよく見える」
見上げた空に向かい、ふーと息を吸い、
「高校卒業したよ」
というと、風で草木がさやさやと音を立てた。
「航、また会おうね!」
そう言って掲げたコンパスは、星奈の手の中でくるりと回ると、ピタリと北を指したあと、ゆらゆらと静かに揺れた。
最初のコメントを投稿しよう!