君のいる方向

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星奈が航に初めて告白したのは、高校2年生の夏のことだった。 「好きです。付き合ってください!」 大きく頭を下げた彼女に向かって、航は一言 「……ごめん、無理」 と答えた。 「えっ?私、今もしかして失恋した?」 驚いたようにいう星奈に、航は 「そう、だね」 と苦笑いを浮かべた。 「えっ?何で?全然意味分からないんだけど」 「いや、俺が全然意味分からないんだけど」 星奈と航は中学からの同級生で、高校で同じクラスになった時点で既に顔見知りではあった。 それに加え、入学早々隣の席になるという展開も、まぁ少女漫画なら付き合う……ってのも悪くないくらいの距離感だったことは確かだ。 でも残念ながら二人の人生は少女漫画ではない。 いつも授業中寝ているか、さぼってどこかの空き教室で暇をつぶしている航にとって星奈は、 「隣の席の女子A」 でしかなかった。 星奈にとってもそれは同じ……だと、ずっと思っていた。 その彼女が、なぜか急に話しかけてきたと思ったらそれが愛の告白だったのだ。 何かの嫌がらせか、罰ゲーム……?なわけないか。 航はとりあえず一番シンプルな答えを返したつもりだった。 「ごめん、無理」 しかし、彼女はぽかーんと口を開き、不思議そうな顔で航を見つめた。
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