君のいる方向

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「えっ?彼女いるの?」 「いや……いないけど」 「だよね!いるわけないよね!」 ほっとしたようにそう言った星奈に向かって、航は 「失礼だな、おい!」 と口を尖らせた。 「だって、神尾くん、他の子と話してるの見たことないもん。私くらいでしょ?神尾くんがまともに話せるの。だから告白すれば、OKしてくれるんじゃないかなーって」 確かに星奈の言っていることは理にかなってる……と言いたいところだが、航はその安易な発想に、少々腹を立てていた。 「そんな簡単なもんじゃないだろ、人の気持ちって。それにあんたがどういう奴かもわかってねーレベルなのに、告白も何もあるかよ」 強くにらみつけるように言った航を見て、星奈ははっとした後 「そっか……うん……!じゃあ、まずは、星奈って呼んでくれるのはどう?」 と答えた。 「はっ!?」 「形から入ろうよ。私は、航って呼ぶからさ。ねっ!そうしよ!」 そう言って、半ば強引に呼び名を強要した星奈は、意外にも少しずつ航と親しくなることには成功したものの、それからも定期的に告白をしては 「無理だって」 の一言で玉砕している。 それでも高3の現在に至るまで、星奈は一向に諦める気配を見せなかった。
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